Q.中古住宅を契約しました。登記簿では売主はご主人さんと奥さんの
共有名義になっていますが、契約にはご主人さんだけが立ち会い、
奥さんは出席されませんでした。
不動産会社は「夫婦だから問題ない」と言われますが心配です。
A.現行の民法では、男女平等の考えに基づき「夫婦の一方が結婚前から
所有する財産、および結婚期間中に自分の力で得た財産は、その者の
財産とする夫婦別産制を採用しています。
今回の場合、売却する不動産の名義が妻との共有ということですので妻
の持ち分は妻の財産になります。
民法では、たとえ夫婦といえど夫が妻の財産を勝手に処分することは許
されず、もし、夫が妻の承諾なくして処分行為をしてもそれは無効とな
るのが原則です。
さて、夫婦は共同生活を営んでいる以上、日用品の購入等、夫婦が共同
して負担すべき事が日々発生します。
こういう日常的に発生する取引行為についてまで、いちいち承諾が必要
としていては不便極まりありません。
そこで、法律は日常の家事に関しては夫婦の一方だけがなした行為でも
それは有効とみなしています。
では、日常家事とは具体的にどのような行為をいうのでしょうか?
まず、家庭用の食料品・衣料品の購入、家庭用光熱費、家族の医療費等
は日常家事にあたることは争いがありません。
また、家電製品、子供の教育費も日常家事にあたるとされています。
これに対し、借入や他人の債務の保証人となることは金額にかかわらず
否定しています。
それでは、不動産の処分は日常家事の範囲といえるでしょうか?
もちろんNOです。
そこで、あなたは売主である共有者の妻が夫に対して売却の件を委任して
いるかどうか確認する必要があります。
直接、当人に確認するのがいちばん確実ですが、もしそれがむずかしいよ
うであれば、委任事項がわかる委任状と、委任者(妻)の印鑑証明書を添
付してもらい、妻が売却に同意していることを確認することです。
万一、委任状もないとすれば、妻に無断で売買しようとしている可能性が
あります。
仮にそうだとすれば契約行為は無効となりますので、あなたは売主の夫に
対して、売買代金の不当利益返還請求や無権代理人の責任としての損害賠
償請求を起こすより方法はありません。
このような事態を回避するためには、不動産などの高額な物件の売買に
おいては、できる限り契約時に当事者全員が立ち会うことが望ましいで
しょう。