Q. 新築建売住宅を見学してきました。
「いいなぁ」と思いつつも、頭金が少ないことや、考える時間が欲しかった
ので躊躇していると、「手付金は200万円ですが、とりあえず20万円
だけ払ってもらえばいいですよ」と、営業マンに強く契約を迫られました。
結局残りの180万円は一か月後に支払う約束で契約をしましたが、強引
すぎる営業に腹が立つので解約をしたいと思います。可能でしょうか?
A 契約に当たって手付金を貸し付けたり、分割受領することを「手付けの信用
の供与」と言います。
宅建業法では、消費者に十分に時間を与えず急がせて契約を締結させると
トラブルになる可能性が高いためであり、トラブルの未然防止・買主保護
の観点から、この行為を特に禁止行為として規制しています。
(契約の誘因行為として禁止されている行為)
@ 手付金を一時立て替え(貸付)て行う契約行為
A 手付金を分割して受領する契約行為
B
手付金を後払いにする契約行為
今回のケースは、手付金を分割して受領することで契約を締結していますの
で 明確な「信用の供与による契約の誘因行為」に当たります。
なお、手付金の分割が宅建業法違反となることから、不動産業者によっては
買主の希望により手付金を分割して支払う、といった内容の念書を取ること
もあるようですが、この書類を書かされたことで当該行為が適用除外になる
わけではありません。
さて、不動産売買契約では、契約締結後に契約を解除しようとする場合は、買
主なら手付金の放棄、売主なら受領済みの手付金を返還しさらに同額の金額を
買主に支払わなければなりません。
では、今回のように手付の一部しか払っていない段階で契約を解除する場合は
どうなるのでしょうか?
昭和58年の大阪高裁の判決によりますと
「手付契約(手付金を授受して行う契約)では、約定の手付金の一部(180万円)
が支払われていない場合、手付契約はいまだ成立に至っておらず、手付の予約が
なされたにとどまる。
したがって、手付契約が成立していないのだから交付のない手付金(180万円)に
ついて、支払いを請求する根拠がない」と、されています。
この判例から、買主は支払い済みの20万円を放棄することで契約の解除をすること
ができることになります。
売主としては、手付金200万円の契約だから、解約するなら残りの180万円を払え
と言いたいところでしょうが、これは法律上認められません。
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早くしないと売れてしまう…そんなあせりが冷静な判断を奪います。
考える時間を与えない営業手法に乗せられないようお気を付けください。