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2025-10-16

共有名義

背が高くスーツがよく似合うAさんは、同性からみても惚れ惚れするような素敵な人でした。

年は50半ば、仕事面でも会社の管理職とまさに男盛りと言った感じですが、なぜか独身でした。

「高望みしているつもりはないのに・・」と、こぼしていましたが、数年前、付き合っていた女性と一緒に住むため、当社の仲介で一戸建てを購入されました。

購入資金の一部をその女性が出したいと言われたそうですが、Aさんは「女房になってもらう人に、そんなことをさせるわけにはいかない」と、全額、Aさんが払うことになりました。

そのため、登記はAさんの単独名義になったわけですが、今思えば、このとき、その女性の頭には将来の不安があったのかもしれません。

当時、その女性は既婚者で夫とは離婚調停中の身でした。
したがって、Aさんの籍には入れず、いわゆる内縁関係になります。

その後、女性は離婚調停中の夫と離婚が成立し、晴れてAさんと婚姻できる状態になりましたが、なぜか内縁状態のまま生活を共にしてきました。

そうしたなか、Aさんが突然の病に倒れたことから悲劇が訪れます。

女性によれば、病院に運ばれた際、Aさんはすでに意識がなく、それから一度も意識を回復することなく亡くなられたそうです。

葬儀も終わり、一段落しているとAさんの兄から電話がありました。

Aさんと女性との間には子供はいませんが、Aさんには兄がいました。
そのため相続人は女性ではなく兄になります。

「あの家は相続でわたしのものになる。悪いけれど出ていって欲しい」

強い口調で突然、退去を求められ困り果てた女性は、他に相談する人もいなかったようで、当社へ相談に来られました。

「米本さん。たしかに私たちは内縁関係で籍は入っていません。でも、彼と一緒に暮らしてきた家ですよ。私には居住権というものがないのですか?」

あのとき、たとえ一部でも女性が資金を出して共有名義にしておけば、あるいは、Aさんが、自分の亡き後は内縁関係の女性が家を使用できる旨の一筆さえ残しておけばと悔やまれましたが後の祭りです。

2018年7月に相続法の大幅改正がなされ、配偶者居住権等の新しい制度が創出されました。

しかし、内縁関係は対象外であり、相続ではあくまで「他人」となります。

残念ですが、女性は相続人の退去依頼に応じるしかありません。