不動産売買において、チェックしなければならないことがたくさんありますが、そのなかでもとくに重要なのがお隣りとの「境界」
不動産は命に次に大切と言われている高価な財産。境界はその財産を守ってくれる、いわば「ガードマン」のようなものです。
われわれ不動産のプロは、現地調査のときは、なにはさておきまずは境界を確認するのが習慣になっています。
更地の場合は、境界も容易に発見できますが、家が建て混んでいたりすると、お隣さんの敷地に入らせていただくことも珍しいことではありません。
もちろん、そのときは一言声をかけてから入らせていただきますが、たいがいはいい顔をされません。
この境界、本来であればどの土地にもあるはずなのですが、現実はそうでもありません。
建築工事の際に邪魔だからといって業者が勝手に引き抜いてしまったり、あるにはあるものの上っ面が欠けてしまってポイントが不明瞭とか、ブロック塀の下に埋もれてしまって・・・などと、はっきりしていないケースの方が多いかもしれません。
「境界、境界って言うけどね、そんなものなくたって今までなんにも問題なかったんだがねぇー」
近くに住む息子さん夫婦と同居するため、自宅を売ることにした伊藤さん(仮名)に、境界がない場合は、売主の負担で測量をしなければならないと 説明しましたが、その表情は、あきらかに不満気。
「伊藤さん、いまはそうかもしれませんが、こういう問題は所有者が変わると表面化することが、 よくあるんですよ。
これまではお隣り同志で揉めたくないから我慢していた、だけど所有者が変われば話は 別。ここではっきりしておこうってね。 そういうことが起こらないように、 境界をはっきりさせておく、これは売主の大事な義務なんです。
「なるほど・・・ 売るときも買うときも必ず境界をチェックしろよってことなんだな・・・」
「おっしゃるとおりです」
境界は隣地との境(道路との境も含みます)の、すべてのポイントにおいて明示しなければなりません。
たとえ一ヶ所でもはっきりしていなければ、測量をしたうえで境界を入れることになります。
判例によりますと、不動産売買契約書に売主による境界明示の義務がたとえ記載されていなくても、売主はその責任を免れることはできないとされています。
売主は境界を明示しません。買主はそれを承知のうえで買ってください、そんな特約が当事者間で合意されていない限り、境界の明示は売主の責任というわけです。
以前、こんなことをいう人がいました。
中古住宅で、引渡しについては現況のままという条件でしたが、一部境界がありません。 売主さんいわく、「現況渡しなんだろう。境界がないことも現況なんだからそのままで引き渡せばいいんじゃないか?」
いえいえ、そうではありません。 現況渡しの意味を取り違えています。
現況渡しとは、現在の状況そのままで引き渡すことであって、瑕疵担保責任を免れることでも境界明示の義務を負わないことでもありません。