土地が足りない その2

ともかく、野田さんにお手伝いをお願いしてメジャーで寸法を測ってみることに。

なにせ、家と家が密集していますので、ひとりでは正確に測ることができませ
ん。

なんとか測り終えたころには、ふたりとも汗びっしょり。

そりゃそうです。季節は8月、夏真っ盛り。
朝から気温はぐんぐんとあがり、予想ではこの日の最高気温は35度を超す
とのこと。

部屋に戻り、冷たい麦茶をご馳走になってホッと一息。

「う~ん、うまい。もういっぱ~いいいですか?」
夏は麦茶に限ります。

このあとに起きる、とんでもない事態も知らないで、ごくごく飲み干す私でした。

噴き出ていた汗もおさまり、さぁー作業開始。

さっき測った寸法をと公図(※)の寸法を照らしあせてみると・・・
 
※公図・・・土地の境界や建物の位置を確定するための地図で、法務局が
       管理しています。

おかしい・・・寸法がまるで合っていません。

じつは公図の精度はそれほど高くなく、現況と相違することはそんなに珍しい
ことではありません。

しかし、それも程度問題。この土地の間口は公図よりも1m少ないのです。

面積で計算すると約5坪の不足です。

「野田さん、野田さんの土地の間口1m足りません!」

「えー、いったいどうして?」

「いままで、おかしいと思ったことありませんでした?」

「いやぁー、そんなこと気にしたことがなかったから・・・」

「1mも足りないなんて普通じゃないんですよ。なにかおかしいと思う
ことあったんじゃないですか?よーく思い出してください」

「そう言われてもねぇ~・・・」

そこで、野田さんがこの家を買ったときから現在に至るまでのことを、詳しく
お聞きすることに。

ご主人さんの記憶だけでは頼りないので、奥さんにも協力していただきました。

奥さんの話によれば、もともとこの家は中古住宅として20年ほど前に購入さ
れたとのこと。

地元の不動産会社から「滅多に出ない物件だからすぐに売れてしまうよ」
なんて煽られ、よく考えもせず購入したそうです。

 こんなセリフが幅を利かしていたんでしょうね、当時は・・・

さらに、物件についての説明(重要事項説明)は聞くには聞いたものの、ほと
んど理解していなかったそうです。

「野田さん、そのとき境界のことを不動産会社から説明されませんでした?」

「塀があったから、そこがお隣との境目なんだなぁー、というふうに理解した
ことは覚えていますよ」

「・・・・・・・」

野田さんの話しでわかったことは、塀がお隣りさんのものであるということだ
けです。

となると、この塀の位置が怪しいということになります。
お隣りに事情を聞いてみよう・・・いや、ちょっと待て。その前にお隣りの敷地
も測ってみよう。

他人様の敷地を測るのは、けっこう神経を使います。

空はあいかわらずカンカン照りで、すでにシャツはぐっしょり。
慎重に何度も測ってみましたがその結果は、やはり・・・でした。

お隣りの間口は公図よりも1m多いのです。
ということは、お隣りの塀が野田さんの敷地に越境しているということになりま
す。

 

                                 

 

                     

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