前回は、「売主も不動産屋も信用できん・・・というところまででした。
歯に衣着せずというか、あまりにもストレートな物の言い方に、違和感を
覚えましたが、ご本人はまったく意に介していない様子です。
たしかに、不動産は高い買物ですから、慎重になるのはわかります。
しかし、慎重と疑うこととは違います。
「 そう思われているなら止めましょうよ。どうぞ、別の不動産屋さんで
お探しになってください」
「おいおい、私は買うと言っているんだ。その言い方はないだろう!」
「売主も不動産屋も信用できないわけですよね? だったら信用できる
人の物件を買われたらいいじゃないですか。 それと、気持ち良く買って
いただける人に譲りたい、と売主さんは常々言っておられます」
「私はそうじゃないと言うのか」
「少なくても、理由もなく疑っていることは気持ち良くありません。手付金
なしの契約はそれなりの事情があるからそうするわけです。今回の売買
は、そうしなければならない事情はどこにも存在していません。」
しかし、その方も頑として自説を曲げようとせず、話は平行線のまま。
「わかった、わかった。もういいよ。頭を下げてまで譲ってくれというほど
の物件でもないし・・・」
結局、それがその方の最後の言葉となりました。
残念ですが、この方とはご縁がなかったようです。
翌日、売主さんに、きょうの出来事を報告しました。
案の定、手付金なしで契約しなければならない理由がどこにある、と
憤慨しておられました。よく断ってくれた・・・と感謝(?) の言葉も頂き
ました。
それから、しばらくしてのことです。
とある住宅メーカーの営業マンから、この土地の件で会って話ししたいこと
があると連絡が入りました。
内容は、物件を気に入っている人がいる。ローンの予定はなく全額現金
で支払う。ついては契約について打ち合わせしたい、ということです。
早々に、その営業マンとお会いすることにしました。
しかし、物件を気に入っているから・・・という方の名前を聞いて驚きました。
なんと、売主も不動産屋も信用できん・・・と言うあの方です。
いったい、なぜまた?
詳しく事情を伺うと、ご主人さんはそれほどでもないのですが、奥さんが
どうしてもあの土地を欲しいとのこと。
しかし、前回、自分から願い下げだ・・・と言った手前、自分から直接私に
言うのに抵抗があったのでしょう。
そこで、建築予定の住宅メーカーに間に入ってもらおう・・・となったようです。
その営業マンが、私とその方とのやりとりを聞いておられるのかわかりませ
んが、少なくても、手付金なしの契約方法は売主さんが納得しません。
続く