相続や離婚等が原因で共有不動産を売却することはよくあることです。
共有とは数人が共同してひとつのものを所有している状態をいい、各共有者が有する所有権を共有持分といいます。
共有持分はそれぞれの共有者が自由に処分することができますが、共有物全体の処分には共有者全員の同意が必要に
なります。
先日、ある方から共有不動産についてこんな相談がありました。
相談内容を要約すると
1.家の名義人は夫婦の共有である。
2.契約時は売主のご主人が立ち合い、奥さんは出席されない。
3.その家を紹介してくれた不動産会社は「夫婦だから問題ない」と言っている。
4.家族全員が家を気に入っている。是が非でも手に入れたいがこのまま契約を進めて大丈夫か?
現行の民法では、男女平等の考えに基づき「夫婦の一方が結婚前から所有する財産、および結婚期間中に自分の
力で得た財産は、その者の財産とする夫婦別産制を採用しています。
今回の場合、売却する不動産の名義が夫と妻との共有ということですが妻の持ち分は妻の財産になります。
夫の持分だけ売却するなら問題ありませんが、妻の持分も売却するとなると、たとえ夫婦といえど夫が妻の財産を
勝手に処分することは許されません。
もし、夫が妻の承諾なくして処分行為をしてもそれは無効となるのが原則です。
ところで、夫婦は共同生活を営んでいる以上、日用品の購入等、夫婦が共同して負担すべき事が日々発生します。
しかし、こういう日常的に発生する取引行為についてまで、いちいち承諾が必要としていては不便極まりありません。
そこで、法律は日常の家事に関しては夫婦の一方だけがなした行為でもそれは有効とみなしています。
では、日常家事とは具体的にどのような行為をいうのでしょうか?
まず、家庭用の食料品・衣料品の購入、家庭用光熱費、家族の医療費等は日常家事にあたることは争いがありません。
また、家電製品、子供の教育費も日常家事にあたるとされています。
これに対し、借入や他人の債務の保証人となることは金額にかかわらずこれを否定しています。
それでは、不動産の処分は日常家事の範囲といえるでしょうか?
もちろんNOです。
そこで、売主である共有者の妻が夫に対して売却の件を委任しているかどうか確認する必要があります。
直接、当人に確認するのがいちばん確実ですが、もしそれがむずかしいようであれば、委任事項がわかる委任状と
委任者(妻)の印鑑証明書を添付してもらい、妻が売却に同意していることを確認するすることです。
万一、委任状もないとすれば、妻に無断で売買しようとしている可能性があります。
仮にそうだとすれば契約行為は無効となりますので、あなたは売主の夫に対して、売買代金の不当利益返還請求や
無権代理人の責任としての損害賠償請求を起こすことになります。
このような事態を回避するには、不動産などの高額な物件の売買では、できる限り契約時に当事者全員が立ち会うことが
望ましいと思います。