世の中には資産価値のない不動産があります。
たとえば、住宅なら今は住むことはできても、将来再建築ができないものとか、将来、売却するにしてもこんなお家、いったいだれが買うのか?
と疑問に思うような家がそうです。
それを知らずに購入するとどうなるでしょうか?
答えは明白。将来、住み替えや何らかの事情で売却しなければいけない時に二束三文でしか売れないということになるのです。
あるお客様から「ネットで見つけた物件ですが、御社でも取り扱いができますか」と相談がありました。
それは、とある不動産会社から売り出されている中古住宅ですが、市街化調整区域内のため、原則、再建築はできない建物でした。
田や畑に囲まれ静かに暮らせそうだからと、お客様は買う気満々です。
土地が広いうえ価格が1000万円台後半ですから一見手頃な物件です。
その方が興味を示すのも無理はありません。
しかし、わたしはその物件をお客様にはおすすめしませんでした。
せっかく買う気になっているのだから、なんとか購入してもらえるように努力するのが営業マンの使命と思われる方もいるでしょう。
でも、不動産のプロとしてお薦めできる物件ではありませんでした。
なぜなら、その家は違反建築物だったからです。
そもそも、市街化調整区域内で建築が認められるには一定の条件が必要で、かつ都道府県知事の許可を得なければなりません。
そこで、その建物が市街化調整区域内であるにもかかわらずどのような経緯で建築できたのか調査してみました。
すると、その建物は病院の看護士寮として使用することを条件として建築許可が下りていることがわかったのです。
それにもかかわらず、完了検査後に住宅用にリフォームされ、実態は住宅として使用されていましたから言い逃れはできません。
完了検査が通ってしまえば違反が発覚することはないとでも、その家の売主は考えていたのでしょうか。
真偽の程はわかりませんが、言えることはその家は間違いなく違反建築物であり、都道府県知事から建物の撤去等是正命令が出る可能性があるということです。
もちろん金融機関の融資は利用できませんので全額現金で買うしかありません。
「大丈夫です。現金はなんとか用意できます。とにかくこの家が気に入ったのです」
「買うときはいいかもしれませんが、将来、売ろうとしたとき、買う人はローンが使えませんよ。
そうすると二束三文で買い叩かれることになるかもしれません。それでもいいですか?」
違反建築物だから撤去命令がでるかもしれない、将来、売れないかもしれない、そんなアドバイスもお客様には届きません。
なぜそこまでこの家に執着されるのか理由を聞いてみました。
「じつは、子どもが精神的に不安定で周囲に人が少ないところでないとダメなのです。これまで散々、探してきましたが
建物が込み入っていない所なんて田舎でも行けば別ですがこの辺りにはありません。
その点、ここなら周りは田や畑ばかりです。
違反建築のことは承知しました。それで大丈夫ですから」
いまは欲しいばかりで後先のことが考えられないお客様。
家に帰ってもういちどよく考えて見ませんかとアドバイスしましたが、結局、そのお客様とはそれが最後でした。
あのときの自分の言動がはたして正しかったかどうかはわかりません。
ただ、不動産のプロとしてのアドバイスは果たしたと思っています。
どうか考えてください。不動産市場は良くも悪くも住宅ローンで成り立っています。
住宅ローンが利用できない物件が、将来どういう状況になるかは誰の目にも明らかです。
資産価値のない物件を購入しない方法は、自分で不動産のことを勉強するのもいいですが
信用できる不動産会社もしくは営業マンを見つけること。これに勝る方法はありません。
信用できかどうかわからないときは、今回の例でも引き合いに出してその会社なり営業マンが
どうアドバイスしてくるか試してみてはいかがですか。