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2025-08-02

越境問題

越境が原因で隣人とトラブルになることがあります。

20年ほど前に中古住宅を購入したAさんは、建物が古くなったので建て替えをすることにしました。

そこで土地の境界を確認したところ隣地との境に境界杭がなかったため土地家屋調査士に依頼して測量をすることにしました。
すると、お隣の家の屋根が5センチ位越境していることがわかったそうです。

Aさんは隣同士で揉めたくないと思いつつも、このまま放っておくというのも釈然とせず、越境部分をお隣の負担で撤去してほしいとお願いしました。

しかし、お隣の方は「いまさら、そんなことを言われても困る」と撤去に応じる様子はありません。

はたしてAさんの撤去要求は正当な主張でしょうか。

まず、所有権という権利は、もともとその完全な使用・利用を妨げる他人に対しては「妨害排除」を請求できます。
土地所有権も同じで、土地の使用や利用を何の権限もなく他人が 妨げるのなら、これに対して妨害の排除ができるのです。

そして、土地は境界いっぱいまでこちらの所有権ですから、境界いっぱいまで使用・利用ができるはずのものであり、
したがって境界を越えて相手が建物を建てたりすれば、そのために使用・利用できなくなったところについて、妨害の排除が請求できることになります。

この理屈でいけば、たとえ5センチの越境であろうと数メートルの越境であろうと越境は越境であり、車が越境して駐車していることも
10階建のビルの端が出っ張っているのも同じことです。

そうすると、たとえ数センチでもビルが越境しており、その妨害を排除するためには、ビル全体を壊さなければならないとしても、妨害排除はできるはずです。

しかし、社会的にみますと、わずか数センチの土地を回復するために何億円もするビルを取り壊すのは、いかにも妥当ではありません。

そこで、こうした場合に出てくるのが「権利の濫用」という考え方です。

いくら権利があるといっても、そんなことまで請求することは許されないということです。

民法は、「権利の行使及び義務の履行は信義に従い誠実に之を為すことを要す」という定めがあります。

信義誠実の原則と呼ばれるもので、この紛争が片付けば二度と顔を合わすこともないという場合ならいざ知らず、
隣同士で毎日のように顔を合わせるわけですから、こうした信義と誠実にのっとった解決を取るのが良いのではないでしょうか。

今回の場合、越境の程度も重大ではありませんので境界確認したことを記す書面に署名押印してもらい、
併せて「越境は現建物が存在する間は認めるが建物を建て直す際には確認した境界線を越境しない」旨の確認書を取り交わすことで、解決を図るのが望ましいと考えます。

法律は、むやみやたらな権利の行使を認めません。民法は「権利の濫用は之を許さず」と定めています。